ADHDの治療方法【薬物療法 vs 心理療法】

ADHD 治療方法 治療

ADHDは、先天性の要因が強い発達障がいであるため、今のところ完全な「治癒」という概念は存在しないと考えられます。

しかし、世界的なADHDの研究者であるラッセル・バークレー博士によれば、ADHDはほかの精神疾患や発達障がいと比べ、有効な治療法や対処法が確立されており、治療可能な障がいなのです。

ADHDの治療法としては、薬物治療と心理治療が採用されます。両者を並行して実施することもあれば、症状がそれほど重症でない場合には、薬物治療は行わないこともあります。

以下では、薬物治療と心理療法がそれぞれどのようなものなのかをご説明します。

薬物療法

ADHD 薬物療法

ADHDの症状をコントロールするには、今のところ薬物療法が最も効果的です。

薬物療法によって、ADHDをもつ患者の50~65%は健常者と変わらないほどに症状が軽減し、残りの20~30%においても顕著な改善がみられることが、研究からわかっています。

アメリカにおいて、ADHDの治療薬のうち1種類以上を服用して、何の効果もなかった人は10%以下であることがわかっています。

ADHDは、脳内の神経伝達物質の異常によって発症するものと考えられています。
具体的には、ドーパミンやノルエピネフリンが少ないために、脳内の情報伝達がうまくいかず、出来事・アイデア・感情といった情報入力に対してきちんと反応することができません。

衝動が抑えられない、過去の記憶や未来のイメージが浮かばず、今すべきことを見失う、やろうとしたことを一瞬で忘れてしまう、そわそわして常に落ち着かない、といったADHDの症状はすべてこのせいです。

薬物療法によって、神経伝達物質の異常を一時的に修正することができ、脳神経細胞間の情報伝達を改善できます。

ADHDの症状が軽い場合には、薬物療法は行わずに、心理療法や日常生活の工夫によってある程度は症状を改善することができます。
症状が中程度から重度のものであれば、薬物治療によって症状がかなり改善される可能性が高いです。

また、ADHDに加えて、うつ病などほかの精神疾患も合併している場合、ADHDの薬物療法は、その合併症に対してもプラスに働きます。
ADHDによる生きづらさから、うつや不安の症状が生じているケースがあり、薬物療法によってADHDの症状が改善されると、うつや不安の症状も同時に改善されることが研究でわかっています。

ADHDの治療に効果があると実証されている薬には中枢神経刺激薬と非刺激薬の2タイプがあります。

中枢神経刺激薬(コンサータ、ビバンセ)

中枢神経刺激薬は、脳内で自己コントロールするための信号を伝達する神経伝達物質の不足を修正し、抑制力・注意力・集中力の向上など、ADHDの症状を緩和する薬です。

現在、日本で主に使われている中枢神経刺激薬はコンサータ(一般名:メチルフェニデート)です。
また、乱用すると危険な薬であるため、流通量が厳重に管理されており、処方できるのは登録した専門医・薬局に限られます。

ビバンセは、2019年に18歳未満の小児に対しての使用が承認された新薬です。
覚せい剤原料を含むため、ADHDの薬の中でもっとも管理が厳しく、取り扱いをためらう医師が多いことや、成人への処方の認可も含めて普及には時間がかかることが予想されます。

非刺激薬(ストラテラ、インチュニブ)

非刺激薬の中心となる薬はストラテラ(一般名:アトモキセチン)です。
日本では2012年に認可され、ADHDの治療薬の中では認可されるまでにもっとも多くの研究が重ねられ、安全性が確かめられた薬です。

中枢神経刺激薬が主にドーパミンをターゲットとして作用するのに対し、ストラテラはノルアドレナリンをターゲットとするため、それぞれの薬の使用によって改善するADHDの症状が若干異なります。

そのため、ADHDによる障がいが脳ののど部分に最も強くあらわれるかによって、中枢神経刺激薬よりも非刺激薬の方が適しているケースがあります。
人の脳は複雑で、構造も機能も人それぞれなので、薬の効果も人それぞれなのです。

ストラテラの特徴としては、副作用が比較的小さい点、効果が得られるまである程度時間がかかる点です。
体が薬に慣れて副作用がおさまるまでに数週間~数か月かかるため、まずは少量ずつの処方からはじめて、時間をかけて必要量まで徐々に量を増やしていきます。

インチュニブは、2017年に18歳未満の小児に対しての使用が承認された新薬です。
今後、成人へと適用が拡大されていくものと思われます。

ADHD治療薬の比較

コンサータとストラテラに新薬のインチュニブとビバンセを加えた4種類のADHD治療薬を比較すると、以下のようになります。

ADHD治療薬比較

出典:新薬情報オンライン

ADHDの治療薬は、精神疾患の治療薬の中でも、とりわけ研究が重ねられ、安全性や効果が確かめられています。
バークレー博士によると、薬物療法の効果を得られる確率は80%にのぼるそうです。
しかし、初回の服用ですぐに効果を得られるとは限らず、自分に合った処方を見つけるために、主治医とよく話し合い、時間をかけて薬をいろいろ試してみる必要があります。

薬物療法については、以下の記事でも紹介していますので、参考にしてみてください。

ADHD薬物療法の実態【ストラテラ vs コンサータ】
ADHDの薬物治療で用いられている主な薬には、中枢神経刺激薬であるコンサータと、非刺激薬であるストラテラがあります。これらの薬の処方については、医師の方針や取扱いの可否、薬との相性などによって、どの薬が処方されるかが決まります。1つ目の薬が...

心理療法

ADHD 心理療法

ADHDの治療を行う上で重要なのは、ADHDという疾患をよく理解することです。つまり、

  1. 自分自身のADHDによる行動特性を理解すること
  2. その行動特性を肯定的に受け入れること
  3. その行動特性を変化させるために立ち向かう気持ちを持つこと

が大切です。これを促すのが心理療法です。

ADHDの人は、これまでの人生において、「だらしがない」「真剣にものごとに取り組もうとしていない」などと周囲から非難され、自己否定的な思いにとらわれていることが多いです。

しかし、このような点が本人の「やる気」の問題ではなく、ADHDという「疾患」によるものであることを認識することで、仕事や人生への取り組み方に前向きな変化をつくりだすことができます。
そして、本人の受けるストレスが減り、精神症状が安定する例も多いです。

ADHDを十分に理解できたら、次に生活環境の調整を行うことが望ましいです。

具体的には、本人の集中力を高めるために、部屋の中を片付けられないケースに対しては、いらないものは捨てる、特定の箱に書類を入れるなど、整理整頓の仕方について学ぶことで、落ち着いてものごとに取り組めるようになります。

感覚過敏により、周囲の雑音が遮断できないケースに対しては、集中するときに、自分にとって心地よい音楽をBGMとして流しておくことが有効です。

また、時間管理のために、システム手帳やスマートフォンを利用することも有効なことがあります。

このように、自己やADHDに対する正しい理解をもとに、自身の行動を変えていくことによって、ADHDによる症状や問題を改善していくことができます。

心理療法の一つに、認知のゆがみを修正して症状を改善していく認知療法があります。
認知療法については、以下の記事で紹介しています。

ADHDの心理療法【認知のゆがみ改善】
ADHDの治療には大きく分けて、薬物療法と心理療法があります。根本にあるADHDの症状(不注意・多動・衝動性)については、薬物療法で治療するのが効果的です。 しかし、ADHDから二次的に発生した心理的影響で、自己評価の低下や不安、うつなど...

薬物療法 対 心理療法

中程度以上のADHDで、日常生活上な問題が大きい場合には、薬物療法は有効です。
研究でも、効果があることが明らかになっており、心理療法などによる薬物療法以外の治療法に比べ、少なくとも2倍以上の治療効果があります。

薬物療法を受けた方がよいのは、以下のような場合です。

  • 中程度~重度のADHDであると専門医に診断された
  • ほかの治療法を試したが、症状が改善されない
  • ADHDの症状により仕事や学業、日常生活に大きな支障がある
  • ADHD以外に、不安障害やうつ病など、その他の精神疾患を合併している
  • スピード違反など、社会的な問題行動を繰り返してしまう
  • 喫煙、過度の飲酒、不健康な食生活、運動不足などについて、改善したいがなかなかできず、健康面での不安がある

また、薬物療法と心理療法を併用するとさらに効果的です。特に、薬物療法が効果を見せはじめたあとに心理療法やコーチングを併用すると大きな効果が得られます。

心理療法は、それのみでは十分な効果があるとは実証されていません。
しかし、薬ではカバーしきれない症状についてどう対処するかなど、日常生活での工夫やトラブルの解決方法を探るときにはとても役に立ちます。

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