栗原類に学ぶADHDへの対処法

ファッションモデル・俳優の栗原類さんは、自身がADD(注意欠如障がい)であることを公表しています。
今回は、栗原類さんの著書を参考に、彼がどのような問題を抱え、どのように対処することでモデルとして成功したのかについてご紹介してみたいと思います。
日米の教育制度の違いや、周囲のサポートや日常生活での工夫の大切さについては、ADHD当事者だけでなく、その親や関係者にも大いに参考になるかと思います。

脳のクセを知り訓練すれば変われる

ADHDには脳にクセがあり、その独特なクセが日常の困難を引き起こしています。
まずは自分の弱点を知ることが克服への第一歩となります。
自分にとって何が苦痛なのか、何が苦手だと感じるのか、そして、家族や周囲の人は自分が引き起こす何で頭を抱えているのか、困っているのか、それを見極めることが重要です。

栗原類さんの場合は、手先が不器用、注意力散漫、集中力が低い、記憶力に問題がある、といった困難があったそうです。
アメリカでは発達障がいの子どもへの支援体制が充実しており、それらの弱点に関して、小学校低学年の時点で問題点を分析してもらえたため、何かを忘れたりできないことがあっても、覚える訓練を始めることができたとのことです。
ADHDは早期に発見して治療や訓練を始めることで、症状をうまくコントロールできるようになり、周囲に適応しやすくなるので、栗原さんのように幼少の頃から周囲のサポートが得られたのは、とても恵まれたことだと思います。

できないことは、ムリせず、対処法をみつける

靴ひもを結べない、結びが下手でよくほどける。
靴ひもをほどかずに、靴底から足を引っ張って脱ぐ。

ADHDあるあるですね、よく分かります。基本的に不器用なので、人の結び方を見て、その通りにうまく真似したり覚えたりできないんですよね。また、つい面倒になって雑に結んでしまったり、すぐにほどけてしまうことがわかっていても、ちゃんと結べません。

しかし、対処法さえあれば、苦手なことがいくつあってもなんとかなるものです。苦手なことを負担に思うよりも、対処法をたくさん考えればいいのです。
先の靴ひもの例では、そもそも靴ひもがない靴を履くとか、蝶々結びの後にもう一結びしてほどけにくくする、などの対処法です。

栗原類さんは、字をきれいに書くのが苦手、手書きで何かを書くのが億劫だったそうですが、手書きではなく打ち込むのなら苦痛にならなかったため、スマートフォンをフル活用したそうです。
忘れてはいけないことは、リマインダーでセットすればアラートで知らせてくれるし、GPSがついていると、地図を見ながら目的地を探すことも可能です。

パソコン、電子辞書、スマートフォンの活用は、小学生や幼稚園児にもおすすめです。
電子機器で補える部分は積極的に使った方がいいと思います。

大いに賛同です。ですが、日本の学校は機会の平等よりも結果の平等を重んじるため、苦手なことがたくさんある発達障がい児だけが電子機器を学校に持ち込んで、みんなと同じ学びの機会を得ることを許さない空気があります。
日本では、小中高を通してタブレット端末やスマートフォンを活用させてくれないのが現実です。

メガネは「ほかの子は使っていないんだから不公平だ。それを使わずに黒板の文字が見えるように努力しろ」とは言われないのに、発達障がい児のスマートフォンについては言われてしまいます。
著書では、それは発達障がいが正しく理解されていないからだと述べられていますが、確かにそうだと思いました。

最近は以前に比べて、発達障がいについて知られてはきていますが、やはり当人の困難が他人からは簡単には分からないため、「娯楽のためのスマホ」という風にしか捉えてもらえないということもあります。また、日本では協調性の名のもとに周りと合わせるために「我慢を強いられる」ような側面も依然としてあるのが残念です。

周りの人に自分のクセを伝え協力を依頼する

ADHDの人は、短期記憶が弱かったり、外の刺激に弱く脳が疲れやすいために、疲れると眠くなってしまったり
人の話が頭に入ってこなくなったりします。

ADHDの症状を周囲の人に事前に言っておかないと、結果として周囲に迷惑をかけることになってしまいます。
栗原さんは、疲れると集中力が異常に低下してしまう、判断力が鈍って正しく判断ができないといったことを仕事関係者に早めに伝えるようにしていたそうです。

「普通の人より体力もなく、刺激に弱いから頭も疲れやすい。疲れると大きなミスにつながる。
サボりたいとか、怠け癖がついているとかではなく、他人に迷惑をかけず、きちんと責任を持って仕事を遂行できる許容範囲が、他の人よりも非常に狭いので、その範囲を逸脱しないように、オーバーロードにならないように気をつけてください。そうでないと結果として皆様に迷惑がかかります。具体的には…」

このように、栗原さんとお母様で事務所のスタッフに説明されていたそうです。
これだけ的確で分かりやすく具体的に説明できれば、周囲の理解やサポートも得られやすくなってくるのではないでしょうか。

栗原さんの場合、お母様もADHDということもあり、栗原さんの症状をよく把握されていたのだと思います。
ADHDの人は、周囲の人に自身の症状を伝えてサポートを依頼することが大切だということがよく分かるエピソードです。

両親など身近な人がADHDの症状に詳しければよいのですが、そうでなくても、本人が自身の症状や苦手なこと、サポ―トが必要なことを丁寧に説明できるようになるだけでも、本人としてもずいぶん生きやすくなりますし、何よりも周りの人も納得して積極的にサポートしてくれるようになるのではないかと思います。

できないことも、恥ずかしがらず伝える

自分の不得意なことは、自分自身の問題ではありますが、自分や家族だけで背負わなければならないわけではありあません。不得意で、自分ひとりの力でこなすのはむずかしいと思ったことは、恥ずかしいと思わず、周りに相談すべきであると栗原さんは述べています。

団体行動がなく、一人だけで仕事をするのなら周りに合わせる必要がないので問題ありませんが、学校や会社など、組織の中で誰かと一緒に何かをする場合は、周りに自分が「できないこと」「苦手なこと」を理解してもらった方が、自分も周りも精神的な負担がかなり減ります。

知ったふりをして背伸びをしていると、知らない状態のままで仕事をする形になってしまい、結果的にマネージャーや現場に迷惑をかけてしまうことがあったそうです。

自分の弱点をさらけ出さないと、単純に残念な人扱いで終わってしまう可能性が高いのです。
そうなると、自分だけではなく家族も精神的に参ってしまう。それだけは避けたいです。

ADHDであろうとなかろうと、なかなか自分の弱点というのは、さらけ出せないものだと思います。
そのような中ですべてをさらけ出す決意ができた栗原類さんに対しては、尊敬の念を抱きますし、ぜひ見習いたいところです。

弱点をさらけ出すことによって、得意なことと不得意なことを区別できます。
得意なことは生かし、不得意なことは周りに助けてもらって補うことによって周囲とWin-Winの関係ができ、成功に繋がったのだと思います。

外界の刺激に弱い脳を疲れさせない

発達障がいは脳の仕組みが独特なことや、感覚過敏の人が多いことは、だんだん知られるようになってきました。
普段はボーっとしているように見えたり、集中力がないように見えても、視界に入ってくる情報は脳の中で何らかの形で処理されています。その視界に入る外界からの情報が「刺激」となることも多々あります。

例えば、毎日通る道や、学校、会社、家の中など、日々見慣れたものは刺激となることはないですが、イベント、パーティー、博物館、美術館、動物園、遊園地など、非日常で楽しいところや人が多く集まるところは、ADHDの脳には大きな刺激となります。それはもちろんいい刺激なのですが、キャパシティは人それぞれに異なります。

基本的にADHDの脳は、一般の人の脳よりも疲れやすいと思ったほうがいいです。
こまめに休むことも大切ですが、ADHDの人(脳)は休むのが下手なため、その場で少し休んだところで疲れがとれず、すぐに「帰りたい」と思ってしまいます。
外出先など刺激の多いところでは、普通の人と同じように楽しむことはあきらめてしまう、という割り切りも必要なのだと思いました。

日米の発達障がいについての考え方・支援の違い

アメリカでは、幼少期から発達障がいの的確な診断をします。保護者が自分で病院を探して、診察を受けないと診断してもらえない日本とは違い、アメリカでは幼稚園で支援委員会が立ち上がり、半ば強制的に専門家による診断が実施され、小学校の就学先を検討したりといった支援プログラムが確立しています。

栗原さんのお母様は、小学1年生の後半になったころに担任から「発達障害の可能性があると思うので診断テストを受けさせたい」と相談されたそうです。
診断テストでは、IQテストを行ったり、教育委員会から行動観察のために学校へ人が派遣されて来たり、担任や英語補修の教師など日常的にかかわっている教師からの査定表の提出がされます。

耳鼻科、眼科などの専門医から視力・聴力などの理由で生活に支障がでているわけではないという検査結果等も提出され、様々な角度からの観察と査定結果を経て教育委員会で審査会を行います。

審査会に参加したのは親、担任、教育委員会の担当者、精神科医、児童心理学者、第三者視点で意見を出す他校の教諭、他校の保護者がボランティアで1名と、そうそうたる顔ぶれだったそうです。

そこで診断テストや書類をもとに話し合いをします。その時の親の言動も観察対象となります。
栗原さんのケースでは、その場でお母様もADHDと指摘されたそうです。子どもの話をしているのに、親の診断までしてしまうところが、スッパリしていてアメリカらしいですね。

発達障がいに認定されるとニューヨークに住み続けて公立校に通い続ける限り教育委員会には継続的に支援する義務が発生します。
税金を使って高校を卒業するまでずっと支援する必要があるため、認定には慎重です。そのため、たくさんの資料を提出し、様々な人が審査にかかわって、認定するかしないかを協議するのです。

アメリカでは地方自治体ごとにシステムも充実度も違います。ニューヨークは周辺地域と比較すると、充実度が高く、日本と比較しても研究も進んでおり、よりよいシステムに作りかえていこうという積極的な姿勢がある分、日本の支援教育よりも充実していると言えます。

発達障がいの子は共有体験が大切

発達障がいの子にとって、絶対的に大切なのは「実体験」です。いわゆる健常児といわれる理解力のある人達と、ADHDなどの発達障がいがある人とでは、脳のはたらきが違うことがわかっています。

例えば不安を覚えたときなどに、そのストレスを解消するドーパミンなどの報酬系のホルモンが出るところが違います。健常児は前頭葉で理解をしながら、不安を解消したり、喜びを感じますが、発達障がいのある子どもは、側頭葉(運動野)で感じることで、不安を解消したり、快感を感じるのです。

一部の自閉症の子が不安を解消する手段としてぴょんぴょん飛び跳ね続けたりするのもそのためで、多動の子が少しもじっとしていられないのも、動くことで心が落ち着くからです。

つまり、そもそもの脳のメカニズムが違うわけです。極端に言うと、健常児であれば言って聞かせて頭で理解して改善できることが、発達障がいの子は行動などを含めて体験しないと改善が進まないわけです。
発達障がいの子達は体で覚えるので、前頭葉でなく側頭葉を刺激する体験が大切になります。
美しいものを見て感動するとか、触ってその感触に驚くとか、なんでもいいので、体で感じることが大切です。
本やテレビを見て知識として伝えるのではなく、何よりも実体験が大事です。

また、失敗してもいいので、とりあえずやらせてみる!というのも大事です。
「失敗しないように」と心配ばかりしていたら、なにもできなくなってしまうからです。
やってみないとわからないことは多いので、とにかくやってみる。
10回くらい失敗して、1つくらい「これでいいんじゃない」というものが見つかればしめたものです。
最初から成功しようなんて思わないことです。

栗原類さんの主治医である高橋先生の、発達障がいを持つ子どもへの対処法10箇条を以下にご紹介します。

  1. ADHD発達障がいではなく、ひとりの個人として理解する
  2. 孤立させない
  3. 周囲で環境を作る
  4. 具体的に生きづらい点、問題点をあぶりだす
  5. 細かく作戦を立てる(表やノートを活用する)
  6. 実行できたら少しずつ前進。次の作戦を立てる
    (無理はしない。できなかったら次の作戦をたてる。)
  7. 声を荒げてもムダ(クールに落ち着いて対応する)
  8. 基本的な生活リズムを作る
  9. 変化していくことを前提に柔軟に考える
  10. 一度立ち止まってみる(人それぞれの方法で)

モデル・俳優の仕事でなければ無理!

栗原類さんは、モデルや俳優といった、今の仕事でなければ、生活できていないと断言しています。
集団的な行動が苦手だったり、日々の生活を管理する能力も著しく低いため、もし会社に就職したら、与えられた業務を期待されたとおりにこなしていくということができずに、周囲に迷惑をかけて疎まれていただろうとのことです。

ADHDの人は、束縛されたり、無駄に規制されることが嫌いなので、会社員のように細かいルールの中で仕事
をするのは、誰よりも苦痛なのかもしれません。

また、集中力も低いため、毎日同じようなことをやり続けると、モチベーションが保てず、飽きてしまう可能性も高いです。会社員などどこかの組織に所属するようになったら、「会議をする⇒デスクワークをする⇒怒られる⇒会議をする⇒帰る」を毎日繰り返すことになって、長続きがしないのではないかと思います。

ADHDの症状の程度やタイプにもよるかと思いますが、今の仕事が「無理!」と感じるならば、栗原さんのように自分に向いた仕事が見つかるまでは、業種を限定せずに色々な仕事をやってみる、というのもありなのかもしれません。今のまま無理をして症状が余計にひどくなったり、うつになってからでは遅いですし、思いがけない適職が見つかる可能性もあるからです。

 

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