【遺伝子研究】ADHDは遺伝する?【子どもはつくらないべき?】

研究

ADHD当事者であれば、「自分のADHDは親からの遺伝なのだろうか?」という風に、ADHDの発症原因について一度は考えたことがあると思います。また、ADHDが自分の子どもに遺伝してしまうのではないかという不安もあるかと思います。

ADHDが生まれ持った遺伝的なものであるということは、誰しもが簡単に推測できるかと思いますが、本当にそれは正しいのでしょうか。また、正しいとすれば、遺伝的な原因が“すべて”を決めるものなのでしょうか。

今回は、ADHDを遺伝子研究の側面からみていきましょう。

ADHDの遺伝確率

ADHDの発症については、ADHD近親者にADHDが多いことから、遺伝的な要因が大きいといわれています。

遺伝学的な研究においては、遺伝的要因と環境的要因のどちらがADHDに関わっているのかが区別できることが重要となります。

環境的要因とは、家庭や教育、経済的問題などのことです。ADHDは遺伝的要因だけではなく、環境要因も組み合わさることで発症するといわれています。

遺伝的要因と環境的要因を区別するために、双子に対するADHDの研究がアメリカやヨーロッパなどで行われ、これら20の研究の結果から、ADHDの平均遺伝率の推定値は76%と示されています(Faraoneら、2005年)。

このことからも、ADHDは生まれつき、すなわち遺伝的な要因によって引き起こされるものであるという側面が“大きい”ことがわかります。

しかし、双子に対して研究を行ったとしても、どの遺伝子がADHDに関わっているのかという視点が欠けているために、遺伝的要因と環境的要因を完全に区別することができず、76%という高い遺伝率の確からしさに疑問が残ります。現在は、後述する分子遺伝学研究によって、どのような遺伝子がどのように関わっているかといった研究が進められています。

遺伝子研究でわかっていること

遺伝子研究により、今のところ、次のようなことがわかっています。

  • 子どもがADHDの場合、その親の10~35%においてADHDがみられます
  • 両親のどちらかがADHDである場合、子どもの40~57%においてADHDがみられます
     ⇒両親のいずれかがADHDである場合、子どもがADHDである確率は通常の8倍になります
  • きょうだいのうち1人がADHDの場合、ほかのきょうだいは3人に1人の確率でADHDがみられます

また、ADHDの症状の程度は、75~80%(90%であるとする研究もあります)が遺伝的要因によって決まることがわかっています。
これは、身長に関する遺伝データとほぼ同じ遺伝レベルであり、パーソナリティ特性、知能、うつや不安傾向などに対して遺伝的要因が及ぼす影響よりも大きいことになります。

ADHDの発症リスクをもつ遺伝子を特定するため人間のゲノムを解析した研究から、少なくとも染色体上の20~25か所がADHDに関係していると考えられています。
複数の関係遺伝子が少しずつ重なり合って複合することによってADHDの発症確率が上がっていきます。
両親から受け継いだ関係遺伝子が多いほど、ADHDの症状は多く、そして重くなり、日常生活が困難になって、診断基準にあてはまるレベルになります。

ADHD発症のメカニズムに迫る、さらなる遺伝子研究

ADHDのさらなる研究

ADHDに関連する遺伝子を分析する分子遺伝学研究では、ドーパミン受容体遺伝子やドーパミントランスポーター遺伝子などの特定の遺伝子が、ADHDに深く関わっていることが分かっています。

つまり、これらの遺伝子の先天的な遺伝要因によって、ADHDの脳の機能異常が引き起こされることが推測できるのです。

ADHDを引き起こす遺伝子のメカニズムについて、脳の神経細胞でドーパミンを再取り込みするドーパミントランスポーターや、脳の神経細胞間でドーパミンを受け取るドーパミン受容体の異常が報告されています。

しかし、ドーパミンのはたらきすぎがADHDの症状を引き起こしているのか、あるいは逆に、ADHDの症状によってドーパミンの働きに異常をきたしているのか、また、どのような状態で生じるのかなど、確かな原因はまだ分かっていません。

このように、研究においては、ADHDの遺伝に関して確たる結論は出ておらず、現状では一定の遺伝要因があるという可能性を示すにとどまります。

しかし、現実に、兄弟姉妹や親族においてADHDが高確率で見られるという事実から、ADHDの遺伝性は大きいと見てまず差し支えないでしょう。

また、家族内においては、ADHDだけでなくASD(自閉スペクトラム障がい)など、他の発達障がいが見られたり、またはそれらが併発している例も少なくはなく、ADHDという枠組みを超えて、発達障がい全体を共通の要因を持つ繋がったものとして連続的に捉えていく必要がありそうです。

子どもはつくらないべきか

ADHDが高い確率で遺伝することが分かった上で、次に悩むのは子どもをつくるべきか否か、ということではないでしょうか。

家族にADHDがみられない場合でも、子どもがADHDである確率は5~7.5%はあります。
あなたや家族がADHDの場合、子どもがADHDになる確率は20~50%です。
確率は高くなりますが、子どもが必ずADHDになるわけではありません。子どもがADHDをもたない可能性も50%以上ありますし、絶対に子供をつくらないと決めなければならないような確率ではありません。

また、ADHDは精神疾患の中でも治療効果が高い障がいです。早期に診断を受けて治療を始めれば、症状はかなりうまくコントロールできます。ADHDであることで、何もかもうまくいかず、幸せな人生を送れないということはありません。

ADHDとうまく付き合い、症状をコントロールすることができれば、充実した生活を送ることができるだけでなく、しっかり仕事をして社会に貢献することもできるはずです。場合によっては、普通の人以上に素晴らしい成果を上げる可能性もあります。

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